占い原稿の仕事が欲しい…依頼をもらう近道とは?

――占いをなりわいにしている人が抱える悩みや不安。1人で考えても解決しないことも多いでしょう。これまで多くの占い師の相談にのってきた、占いカフェ&バー「燦伍(さんご)」のオーナー占い師である千田歌秋さんが、あなたのお悩みにお答えします!

今回は、3月24日に配信したスペース「占い原稿の仕事が欲しい…依頼をもらう近道とは?“ならでは”お悩み相談室」をもとにお届けします。

第21回

占い原稿の仕事が欲しい…
依頼をもらう近道とは?

「副業で対面鑑定やチャット鑑定の仕事をしていますが、ゆくゆくは雑誌やウェブメディアなどで占い記事の執筆もしてみたいと思っています。 原稿の仕事をもらうには、どうすればいいですか? 企画を持ち込んだりするべきでしょうか?」

今回は、占い原稿の仕事をしてみたいというお悩みにお答えします。ここで言う原稿の仕事とは、雑誌やウェブサイトでよく見かける運勢記事や占い師が占術や世相を語るコラム記事など、または、占いに関連する書籍の執筆のことですね。

対面鑑定やメール鑑定で占い師デビューをした人が、キャリアの幅を広げるために原稿の仕事を目指すというケースは、実は多いのではないでしょうか。私も、もともと文章を書くのが好きだったので、占い師として駆け出しの頃には、いつか原稿の仕事をしたいと思っていました。

それでは、原稿の仕事を目指す人は、どんな努力をすればいいのでしょうか? 大前提として、基本的なライティングの技術をしっかり身に付けておくことは必須です。ライティング講座に参加したり、人気のあるライターの書き方を参考に練習したりしてスキルを上げておきましょう。

こうやって基礎を固めるのは、まだ最初の一歩です。仕事のオファーをもらえるようになるには、さらに工夫が必要になります。

ビジネスの極意
「三方よし」を意識する

ビジネスの極意
「三方よし」を意識する

そもそも、原稿の仕事は依頼主あってのもの。自分勝手に文章を書いているだけでは仕事を得るのは難しいでしょう。そこで、ひとつおすすめの考え方をご紹介します。

江戸時代の近江商人から伝わった「三方よし」という言葉があります。この三方とは、「売り手」「買い手」「世間」の3つをあらわしており、三方それぞれの利益につながる商いこそが大切だという考え方を「三方よし」といいます。

原稿の仕事における「三方」とは、以下をイメージしてみるといいでしょう。

・「売り手」:ライター、原稿の仕事をしたいと思っているあなた自身
・「買い手」:仕事の依頼主であるメディアなど/あなたの文章を読む読者(有料記事や書籍の場合)
・「世間」:占い業界など世間一般のこと

占い師が原稿の仕事をする上で起こりがちなのが、「世間よし」と「買い手よし」を軽視してしまうケースです。「自分が書きたい」「これを伝えたい」という想いが強すぎて、この点にばかりフォーカスを当ててしまい、結果的に、買い手側のためにならないこと、利益につながらないことを企画してしまうのです。

実はオススメできない!?
書きたい企画の持ち込み

実はオススメできない!?
書きたい企画の持ち込み

もし、「書きたい企画」を「載せてもらいたい媒体」(出版社やサイトなど)に持ち込もうとしている方がいるなら、ちょっと注意が必要かもしれません。自分の書きたい内容を希望の媒体に載せてもらおうとすると、「売り手よし」ばかり優先することになるからです。お金を支払うのはあなたではなく媒体の方ですから、「買い手」にとって報酬に見合うメリットのない仕事は、そもそも成立しないのです。

原稿の仕事を得るために、私がオススメする方法は2つです。

・書きたいことを発信する
ひとつは、それでも自分の書きたいことを優先する場合です。「買い手」を見つけるのは後回しにして、ブログやSNS、同人誌などを使って発信していきましょう。

もちろん、ただ発表するだけでは仕事にはなりませんよね。遠回りになりますが、まずはあなたのコンテンツのファンになってくれる読者を獲得しなければなりません。そのためには、あなたにしか書けない、そして、読者が喜んでくれるコンテンツを発信し続けることが重要になります。
実際、何年も続いていたブログが、ちょっとしたことをきっかけに突然ヒットするケースもあります。それは、質の高いコンテンツを地道に発信し続けてきたからこそだと思います。

そうやって個性的で人気のある発信を続けていると、コンテンツが出版社やメディアの編集者など、仕事の依頼主の目に留まり、オファーをもらえたりします。

しっかりオファーにつなげたいなら、セルフブランディングを意識するといいでしょう。コンテンツを見た依頼主がすぐに見つけられるところに、あなた自身の世界観が伝わるプロフィールやポートフォリオを準備しておくのも必要なテクニックです。

・現時点でつながりのある媒体にアプローチ
もうひとつは、あなたとつながりのあるメディアにアプローチすることです。例えば占いの師匠に、お付き合いのある媒体を紹介してもらうなど、何かしらのコネクションを作って、その媒体の要望に応えられることをアピールしましょう

こういったケースで求められるのは、幅の広い対応力です。例えば、西洋占星術だけでなく、ほかの様々な占術を知っているか、心理テストなどにも対応できれば、それだけ、依頼主のニーズに応えやすくなり、仕事になる確率が上がります。

依頼を得るには、世の中の占い記事をよく研究しておくことが大事です。人気のあるジャンル、逆に誰も挑戦していないジャンルなどを把握して、書けるようになっておくことをおすすめします。

無償・安い原稿料で仕事を受けるときの注意点

無償・安い原稿料で仕事を受けるときの注意点

ただし、媒体からオファーをもらったからといって、なんでも受けてしまってはいけません! 注意すべきポイントをお伝えします。

ひとつは、自分のポリシーに反する仕事を受けることです。上品なイメージで売っている占い師が、下世話でエロティックな記事を書いていたら、これまでのお客様の信頼も失いかねないですよね。その記事を書くことで、自分の活動やブランディングにどんな影響があるのかということを意識して仕事を吟味してください。

また、原稿料の安い仕事、無償の仕事を受ける際も注意してください。予算がない中で運営している媒体も多いので、少ないギャラで仕事をしてくれる占い師さんは重宝されやすいかもしれません。しかし、あなたがその仕事をすることで価格破壊が起こり、業界全体の原稿料のベースが下がってしまう、という恐れもあります。こうなると、先ほどお話しした「三方よし」の「買い手よし」を優先することで、「世間よし」を犠牲にしてしまうことになります。占いは無料/安いもの、という風評を広めないよう充分注意しましょう。

しかし、どうしても無料でもその仕事を受けたい場合は、原稿料以外に自分のメリットにつながる可能性を考慮してみてください。その仕事を受けることで、貴重な経験になるか、自分の活動のPRにつながるか、など、一定の基準を決めて判断するといいでしょう。「買い手よし」に加え、「世間よし」、「売り手よし」のバランスを整えてください。

無償の仕事を受ける際は、依頼主にとって「この人は無料で書いてくれる人」という位置づけにならないように、その仕事を受けた後のビジョンを明確にしておくことも大事です。最初は無償でも、最終的にお金をもらえる仕事にしていけるかどうかを考慮して、依頼主との交渉はしっかり行いましょう! 実力や才能が不足していて有償に値しないと判断された場合でも、誠実な依頼主との仕事であれば、何が足りないのかのアドバイスをもらうことくらいはできるはずです。

今後の原稿仕事の可能性
必要とされるスキルとは

今後の原稿仕事の可能性
必要とされるスキルとは

最近のトレンドを追っていると、よくAIが話題に上っていますよね。もはやAIが、人間さながらの文章を書いてくれる時代になりました。占い原稿の仕事もAIがライバルになりつつあるということかもしれません。

しかし、当面はAIの書いた原稿を校正・校閲する仕事の需要が高まっていくのではないでしょうか。AIがすごいといっても、現時点では、専門的な知識を持つ人間が、AIに指示を出したり、AIの文章が正しいかを監修したりしなければ、質の高い原稿を作れないからです。そういう意味では、今後原稿の仕事をするなら、AIの理解を深めることも重要だと言えますね。

AIには書くことのできない文章を、もっと言えばほかの誰も書くことのできない「あなたの文章」を書くことができる人が、厳しい競争の中で生き残っていくでしょう。「うまく」「正確に」書くことは、編集者なども手助けしてくれますが、「あなたらしく」「エネルギーに満ちた」文章を書くことは、誰かがフォローできるものではありません。

間違いなく言えるのは、原稿の仕事を得るのに近道はないということです。独自の視点で物事をとらえること、表層的なテクニックに囚われず魂の叫びや情熱のほとばしりを刻み込むこと、それを地道に続けていけば、必ず読む人にあなたの個性と熱意が伝わるはずです。魂を込めて仕事をしていきましょう!

2023-04-06

著者プロフィール

千田歌秋(せんだ・かあき)

千田歌秋(せんだ・かあき)

占いカフェ&バー燦伍(さんご)のオーナー占い師であり、バーテンダー。飲食と占いの融合とホリスティックな癒しをテーマに、占い鑑定と開運メニューを提供。店舗経営と占い鑑定のほか、占い師の育成やマネジメント、占いイベントの企画監修も行うなど、様々な占い事業を展開している。
著書に「ビブリオマンシー 読むタロット占い」(日本文芸社)、「はじめてでも、いちばん深く占える タロットREADING BOOK」(学研プラス)がある。

HP https://khakisenda.wixsite.com/eranos

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