苦労の多い道だからこそ、占いをする理由に目を向けて/天童春樹 第3回

占いという分野において、独自の力で道を切り拓き、先駆者として占い業界を引っ張ってきたレジェンドたちに自らの半生を語っていただきました。 今、多くの人に親しまれている「占い」を形作った人々の生きざまや想いを深掘りしていきます。

人相術の第一人者

天童春樹

占い師において後進を育成することも非常に重要な仕事のひとつです。日本の観相術の第一人者・天童春樹さんも長きにわたって育成に力を入れてきました。

今回は、街頭の占い師として、多くのお客さんを鑑定してきた天童さんだからこそ語れる、いい占い師の条件や、一人前の占い師として成長していくために大切なことを教えていただきました。

年表
レジェンドの足あと

名前を呼び捨てするのは
先人への敬意を欠くこと

私自身も35歳から占いを教える活動をはじめ、これまでに多くの方に私の占いを伝授してきました。

占いを学ぶ上では、言うまでもなく基礎基本を理解することが重要です。しかし、ただ基礎基本の理論を理解すればいい占い師になれるかというとそうではありません。この点は占いの難しくもあり、おもしろいところでもあります。

いい占い師となるために重要なことのひとつが心構えです。

占いとは、先人たちの研究と努力の積み重ねです。つまり、占いを学ぶというのは、この先人の研究と努力を知ることからはじまります。

だからこそ、この先人たちに対して敬意を持つことを忘れてはいけません

例えば、昔の占術の著者などを、亡くなった人だからといって名前を呼び捨てにしたりする人もいます。これはよくはありません。きちんと「先生」とつけて名前を呼ぶことをおすすめします。口に発することは全て言霊ですから、敬意をあらわせば著者の気持ちとつながることができるはずです。

本というのは、著者の経験や人生がすべて文字や表現となって形になったものです。著者に対する敬意を忘れずに、その人が目の前にいるという気持ちで本を読むことで、その神髄を本当に理解できるようになるのだと思います。先人たちが積み重ねてきた占いの歴史をしかるべき態度で学ぶ、そうすれば、学びの本質に触れられるはずです。

レジェンドの足あと

基礎を学ぶのは必須!
しかし、その上で
型を破るのも重要なこと

占いを学ぶ上では、先人への敬意の心を持ち、その上で型に囚われすぎないのが非常に重要です。これを教える側から見ると、生徒を縛りすぎる指導方法はあまりよくないということでもあります。

この点は誤解を与えかねないので、より詳しく説明をします。

前提としてしっかりと基礎基本を学び、型を身につけることは必要不可欠です。しかし、占い師として重要なのは、型ではなく、実践を通してお客さんに満足してもらえるかどうかではないでしょうか。そのためには、型を土台とした上での自分というものを確立していかなければ占い師として一人前にはなれません

この点では、私自身も苦労をしました。駆け出し時代は「お前の占いは教科書通りだ」と先輩によく指摘されていましたから。なかなか型を破ることができなかったのですね。また、私の師である八木喜三朗先生にも「早く実地鑑定をしなさい」と励ましをいただいていました。これもまた実践の重要性を説いた指摘です。

江戸時代中期の観相学の大家である水野南北先生という方がいます。南北先生が教えを請うたのは1週間だけだったといわれます。その後は徹底的に実践を重ねたそうです。そして、観相学の大家と評価されるほどの成果を残しています。

再度となりますが、基礎基本がないのに実践だけをしたり、自分の色を出そうとしたりしても効果はありません。しかし、理論だけを勉強しても不十分なのも事実です。しっかりとした型を習得したらそこから先は実践の繰り返しが成長のためには必須といえるでしょう。

レジェンドの足あと

占い師の道は苦労が多い…
だからこそ
「好き」の心を忘れないで

占い師の道は、苦労の多いものです。具体的には、収入の面でしょう。占い師一本で生計を立てられるようになるには、それなりの時間を要します。かく言う私も、アルバイトをしながら街頭で占いをするという生活を10年近く続けました。

ただ、そんな日々の中でも無理をしてはいけません。占いを学ぶ人は、占いが好きで学びはじめたというのがほとんどでしょう。それなのに、その好きな道で無理をしてしまっては、好きな占いも好きでなくなってしまいます。さらには、占いをする目的がお金を稼ぐことにすり替わってしまうかもしれません。 ですから、占いだけで稼げないときは、無理をせずにほかの仕事をしてもいいのです。まずは生活を安定させてから、好きな占いをすればいいのですから。


占いを好きであることと同様に、自分はなぜ占いをするのかという「発心」にも目を向けてほしいと思います。

第1回でもお話しましたが、私の場合は、幼少期から運命や人生の数奇さに惹かれたことが占いの道に進んだ土台にあります。そして、この気持ちは今でも変わっていません。

この発心が「占いは儲かりそう」とか「楽に稼げそう」ということを目的とする人も中にはいます。こういった気持ちで占いをはじめても、やはりいい占い師にはなれないでしょう。それは、世のため人のためではなく私利私欲を満たすために占いを使うことになるからです。

人相や手相、つまり「占い」というものは、人を幸せにするための手段です。占いの道に進む人はこの点を忘れることなく、日々感謝をして勉強や実践を深めていってほしいです。


そして、最後にもう一点。

私としては手相・人相を専門的に学ぶ人が増えてほしいという思いもあります。

手相・人相の世界は非常に奥深いものです。特に日本の観相学は、先人たちが積み重ねてきた実績が豊富に残っており、他国に比べても非常に充実した分野だといわれています。表面的な知識だけを片手間に習得するといった形では、満足しきれないほどの奥深さがあります。ですから、受け継がれてきた伝統を途絶えさせることなく、これからの占い界を担う人たちに伝えていきたい、というのが、私が占いを教える理由でもあります。

2023-04-16

出演者紹介

天童春樹(てんどうはるき)

天童春樹(てんどうはるき)

旧名:天道春樹
街頭易者として50余年の実績を持つ占い師。人相・手相の分野において日本での第一人者。
昭和22年8月19日申の刻に、現在の高知県高知市大津に生まれる。16歳で運命学に出会い、八木喜三朗先生に師事。19歳で大阪の「八木観相塾」の末席を汚す。高知県、高知市帯屋町の街頭での運命鑑定、自宅での予約鑑定、出張鑑定に応じている。要望があれば随時、「天童観相塾」を主催して、人相術の普及に努めている。

HP:http://wwwe.pikara.ne.jp/tendou-haruki/index.html

記事執筆者

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

ライター業とリサイクル業の二刀流で生計を立てています。机に向かって文章を書いたり、大きい荷物を運んだり、頭と体を日々フル活用しています。

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