
「占いとは何か。どうあつかえばよいのか」占いに携わるみなさん一人ひとりが考え、たどり着いた「知」とは? 占いに対する発見や考察、問題提起など、みなさんの声を聞かせてください!こちらでは、LittleLight編集部に届いた読者の方々からの投稿原稿を紹介していきます。
今回は、タロット占い師のさざ波スワンさんが、タロットと芸人、2つの視点から「占い」の本質に迫っていきます。
芸人とタロット
寄稿者:さざ波スワンさん
太田光さんの「炎上」から見えてきた「道化」としての芸人
お笑いコンビ・爆笑問題の太田光さんは度々「炎上」する。テレビでの太田さんの発言は、世間の人を「え? なんでこの文脈でそんなこと言うの?」という思いに駆り立てるようだ。
例えば、世の中が「どこからどう見ても、これが正しい意見」と思い込んでいるところへ、「でもさ、こういう見方もできない?」と一石を投じるのが太田さんである。ご本人はもちろん炎上を狙っているわけではないし、もしかすると、一石を投じている意識もあまりないのかもしれない。太田さんはただ「芸人」という職務を全うしている。ただそれだけのように見える。
芸人とは、「道化」である。
道化は王様の身代わりとして誕生したものだといわれている。王様が完璧な支配者として君臨するために、道化が代わりに失敗役を引き受けたり、建前上、許されないことを代行したりした。
国を統一し社会秩序を維持するためには、多くの場合、規則を守ることを重視し、多様性を切り捨てなければならないだろう。しかし、人間がそのような単層の世界に押し込められると、必ず歪みが生じる。その事実を王様に向かって突きつけることができるのもまた、道化だった。そんな大胆で危険極まりない行為が、なぜ道化に許されたのかというと、道化が愚か者だと見なされていたからだ。たとえ、道化が真実を語っても、「バカが、バカ言ってらぁ」と一笑に付すことができる。しかし、実際、道化が口にする真実は、人間が人間らしく生きるためには欠かせないものだ。
タロット占いもまた「道化」なのだ! 芸人と占いの共通点
だから、タロットカードにも道化がいる。ご存じ、「愚者」のカードである。
愚者には、危険を顧みず、気の向くままに放浪の旅を続けているイメージがある。ウェイト=スミス版など、秘教化されたタロットが登場する前、愚者は社会の枠をはみ出た人、つまり、アウトサイダーとして、その姿を描かれていた。アウトサイダーだから、枠の中の事情なんて忖度しない。少しでも違和感を抱けば、ストレートに疑問をぶつけてくる。
タロット占いで「愚者」が出たとき、自分が窮屈な常識の枠にはまった状態にいることに気付かされ、「もっとリラックスしたっていいんだ!」と気持ちを切り替えられる。それは愚者が、枠の外から「それ、おかしくない?」とツッコんでくれるからだろう。まさに、道化としての芸人にそっくりではないだろうか。
ただ、私は「愚者」に限らず、78枚のタロットカード全てが、実は道化の役割を担っているのではないかと思っている。凝り固まった考えから抜け出せず、頭を悩ませているときに、ふと引いた1枚のカードは、こちらの事情なんておかまいなしに、「こんなん出ました~」といった感じで無責任にクロスの中央に鎮座する。
「気になる彼と親しくなりたいのですが、どうしたらいいですか?」という質問に対して、「隠者」のカードが出たとする。「人と距離を置いて、内省しましょう」と言い放つカードに、思わず「えー! 彼と親しくなりたいって言っているのに、人と距離を置けってどういうこと?!」となる。
しかし、この「えー!」という反応は、それまでカードが示すような視点を自分が持っていなかったことの証である。つまり、もうその時点で、八方塞がりの思考に一つ、風穴が開いたことになる。タロットカードは時にボケとなり、時にツッコミとなり、鈍くなった私たちの頭を揺さぶってくれる「道化」なのだ。
「道化」を侮ってはいけない それは社会に必要な存在
昨今、コンプライアンス問題で、芸人の多くはなかなか本領を発揮できない時代である。しかし、彼らは、タロットと同様、枠の外から、枠の中にないものを放り込んでくれる貴重な存在だ。規範の中で生活する私たちが思考停止に陥ることなく、柔軟かつ多角的なものの見方を忘れずにいられるのは、社会の中に道化役がいるからであり、芸人はその代表格である。
芸人の言うことに対して、いちいち苦情を申し立てたり、彼らを見下して、うっぷん晴らしに誹謗中傷を浴びせたりすれば、それは回り回って、自分の首を絞めることになる。なぜなら、道化は私たちの中にある自由や多様性そのものであり、道化を締めつければ、当然、私たちの中の自由と多様性も制限されることになるからだ。
そして、もう一つ、大切なことがある。自由と多様性が蔑ろにされ、私たちの考え方が画一的になっていくと、いったいどうなるのか――私たちは知らぬ間に搾取されやすくなってしまうのではないだろうか。
もし、タロットカードの世界観が人々の間にもっともっと浸透したとしたら、日々感じるこの閉塞感もいくらかは軽減されるかもしれない。太田さんの発言が炎上を招くたびに、そんなことを考えてしまう。
おはようございます、さざ波スワンさん。
アウトサイダーの発言ってのも、時には貴重なものとなりうるんですね。太田さんの著作「憲法九条を世界遺産に」を以前買ってよみましたが、それをブログに投稿したところ、ある人にしつこく絡まれて困った記憶があります。タロットの図柄にも興味が出てきました。愚者ってどんなイラストで描かれているのか、調べてみようと思います。ピエロみたいな感じなのかな?
きょう豆曜日さん
貴重なお時間を割いて、本文を読んでいただき、本当にありがとうございます。
きょう豆曜日さんの「憲法9条を世界遺産に」のブログ記事を拝見したのですが、このような常識的な記事にしつこく絡んでしまう方は、おそらく太田さん、あるいは憲法9条というキーワードに自動的に反応するパターンに陥っておられるのかもしれませんね。
実は、タロットの中で一番普及しているウェイト=スミス版タロットは、その制作段階において、カバラの哲学を図に表した「生命の木」というものを取り入れています。
この「生命の木」では、人がなぜ思考停止に陥り、自分と異なる意見を持つ相手と「対話」できなくなってしまうのか、その仕組みが明解に示されているんですよ。
タロットの図柄に興味をお持ちいただけて、とてもうれしいです。
タロットの「愚者」は、古くはボロボロの服をまとった放浪者でしたが、時代とともに道化の姿になったり、ウェイト=スミス版では若い旅人の姿として描かれたりしています。
きょう豆曜日さんのおかげで、アメブロの記事ネタをひとつ、見つけられた気がします(笑)
ありがとうございました!
芸人とタロット。意外な組み合わせ!
爆笑問題の太田さんのことを私はそんな風に見てなかったです。
そしてタロットカードは全てのカードが道化とは、、興味深い。
タロット占いは指針ではなくお助けアイテムのひとつだと考えているので、より身近なものにして生活に溶け込ませたいです。
面白かったです!
geminiさん
本文を読んでいただいたうえに、コメントまでしていただき、本当にありがとうございます。
「お助けアイテム」、ナイス命名です! その名の通りだと思います。
好きな時に一枚引いて、「じゃあ、ちょっと”戦車”の視点に切り替えてみるか」なんて気分転換をはかれるような、身近なものになればいいなと私も思います。