

「ルーン占い」の魅力
解説:dainmt(だい)
ある占術に対して深い知識と造詣を持つ方に、占術の特性や魅力を伝えていただく本企画。今回は、dainmtさんに「ルーン占い」について語っていただきました。
ルーン占いとは
ルーン占いとは、「ルーン」という古(いにしえ)の文字を使って占う、神秘的で不思議な魅力を持つ占術だ。
ルーンの起源については諸説あるが、ヨーロッパ北部のスカンジナビア半島やイギリス諸島周辺の地域から始まったといわれることが多い。これらの地域では、石碑をはじめ、硬貨や指輪、兜、杖、荷札などに彫られたルーン文字が数多く発見されている。当時の人々の日常生活を支える文字だったのだろう。のちにアルファベットの形にも影響を与えた、という説もあるそうだ。

ルーンは、その長い歴史の中で形や意味を変え、文字数までも変化させてきた。そうした変遷の中で、日常的な文字はいつしか呪術的、魔術的な色彩を持つ文字として扱われるようになったともいわれる。
これらは様々な物語の中にも色濃く残されている。古くは北欧神話、現代ではJ・R・R・トールキンの『指輪物語(The Load of the Rings)』をはじめとした諸作品の中に、ルーン文字がお馴染みの存在として登場するのはよく知られていることだ。
物語を読めば、ルーンが文字(表記記号)として当時の人の生活にどれだけ深く根差していたのかがよくわかるだろう。ただその一方で、普段から占いを通してルーンに親しんでいる僕としては、ルーンの魔術的な側面を意識せずにはいられないのだ。あるいはそもそも「文字を書いて何かを表現する行為」そのものが十分に魔術的だったのではないかと考えずにはいられない。それが、僕がルーン占いに惹きつけられる理由のひとつだ。
どうやって占うの?
ルーン占いは、一見シンプルではあるが象徴を読み解くうえでスキルや自由な想像力を要する、非常に奥深い占術である。
基本的には、24個の文字が刻まれた「かけら(石や木片など、カードの場合も)」と、ひとつのブランク・ルーンと呼ばれる何も描かれていない「かけら」の計25個を使って占う。「かけら」に描かれたルーン文字が象徴する意味から、さまざまな事象を読み解いていく。

24個のルーン文字
ただし、ルーンは他の占術に比べて体系化された形式や理論が少なく、あったとしても「目に見える形」で証明されていないことも事実だ。
他の占術であれば、タロットの大アルカナと小アルカナの連係、惑星の配置、干支の構造、易のシステムなど数多くの文献を調べて、考察し、説明することができる。しかし、ルーン占いの場合は、さまざまな伝統的な解釈や歴史学的な考察は存在するものの、占術上の定説というものがまだ確立されていない。そのため、ルーン文字の象徴を読み解くには、一定のスキルを必要とする。それと同時に、原初的な神託エネルギーを伴ったある種の自由さをもたらしてくれるのもこの占術の魅力のひとつだろう。
自分自身を内観するのに最適
何かに迷ったとき、悩んだとき、誕生日や新年などの節目のとき、何かサジェスチョンが欲しいとき、僕はルーンに訊ねることにしている。それは、何かを決めてもらうというよりも相談に近い感覚、あるいは自分自身に問いかけていると言ってもいい。
究極的なことを言えば、人生は「私たちの意識」によって形作られている。つまり、私たちの人生は、目の前に起こった出来事をどのように捉え、それによってどう行動するかで大きく変わっていく。こう考えると、「世界」も「日常」も私たちの外側にあるのではなく、自分自身の内面にあると言えるだろう。だからこそ、迷ったとき、悩んだときは、自己を内観することで突破口を開くためのヒントを得られるはずなのだ。
ルーン占いは、そうやって潜在意識を内観する場合に有用であり、自分では気付けなかった見落としにフォーカスを当ててくれる占術だ。なぜなら、ルーンが発する示唆的かつ暗示的なメッセージは、強く感覚に訴えかけてくるものだから。また、ルーンはタロットなど他の占術ほど分析的ではないため、理性やバイアスによって色眼鏡のかかった判断に陥る危険性は低いのではないだろうか。それ故に、意識の下で本当に求めているものに気付くことができるのだと思う。
形式にとらわれない自由な読み解きが可能
さて、鑑定の現場において、実際にどう使っているのかといえば、ルーン単体で占う場合と他の占術と併用して占う場合があり、僕の場合は後者であることが多い。
単体で占うケースでは、例えば「キャスティング」という方法がよく使われる。簡単に言うと、無作為にルーンをばらまくことである。九星図や、ホロスコープと同様に12室に分けられた円などの図像が描かれたシートを準備し、その上にルーンをばらまいてルーン文字の配置を見ながら意味を読み解いていく。

図像の上にルーンをばらまく
先にも述べた通り、ルーン文字を使った占いに正統な方法、あるいは「これが唯一の正解」というものはまだ見つかっていない。だから、「ルーン文字は象意を持ったシンボルに過ぎない」というポイントさえしっかり押さえていれば、形式にとらわれない自由な読み解きをすることも可能である。
キャスティングのようにばらまいたり、スプレッドを作って占ったり、その使い方は読み手にゆだねられている。
クライアントの本音や悩みの本質を引き出す
一方、他の占術とルーン占いを併用する場合は、クライアントの状況、つまり、恋愛や仕事、人間関係などにおいてどのような局面にいるか、を占うのに適している。
鑑定の現場では、クライアントは相談内容をうまく話せなかったり、自分にとって必要なことや悩みの本質を明確に自覚できていなかったりすることもしばしば見られる。例えば、クライアントから「片思いのお相手の気持ちが知りたい」という相談を受けたけれど、「自分の気持ちを整理できずにいる」という悩みの本質に本人が気付いていないといったケースだ。
そんなとき、クライアントがどのような問題を抱えているか、どのような流れの中にいるかを読み解くためにルーンを使う。
このように、僕にとってのルーン占いとは、言葉なき言葉に耳を傾けるための占いであり、鑑定の現場において重要な役割を担う占術のひとつなのだ。

ルーン占いとは、北欧に伝わるルーン文字を使って占う、一見シンプルでありながら神秘的で不思議な魅力を持つ占術である。
こんな方におすすめ
- 北欧神話の世界に惹かれる人
- 自由な想像力をもって解釈の幅を広げたい人
- 潜在意識にフォーカスを当て、悩みの本質を導き出したい人
「ルーンは単なる一人の教師に過ぎない」
これは『ルーンの書』(ヴォイス)の著者ラルフ・ブラム氏の言葉だ。
僕は鑑定中にルーンを使って、そっと自分を占ったりしている。たとえプロの占い師でも、時には目の前にある状況や状態がどういったものなのか、迷うことがある。そんなときこそ、ルーン占いの力を使って謙虚な気持ちに立ち戻り、“先生”からのヒントやメッセージを受け取ることにしている。
2022-12-11