
占いという分野において、独自の力で道を切り拓き、先駆者として占い業界を引っ張ってきたレジェンドたちに自らの半生を語っていただきました。
今、多くの人に親しまれている「占い」を形作った人々の生きざまや想いを深掘りしていきます。
タロット占いの第一人者
占い師
ステラ薫子
ステラ薫子さんの代表的な仕事のひとつに「ステラタロット」の制作があります。日本で作られたオリジナルタロットの中で、世界的に流通の幅を広げ、これほどまで多くの人に親しまれているのはステラタロットをおいて他にないでしょう。
今回は、そんなステラタロットの誕生秘話をステラ薫子さんに語っていただきました。


「この人しかいない!」
宝永たかこさんとの出会いから始まる
タロット制作プロジェクト
これまでの仕事を振り返ってみて思い出深いことのひとつにステラタロットの制作があります。ステラタロットは、制作開始から世に出るまで約10年の月日をかけた力作です。
きっかけとなったのはイラストレーターや絵本作家として活躍している宝永たかこさんとの出会いです。1995年、宝永さんの展覧会でその魅力に出会ったときの感動は今でも忘れられません。「この人しか私のタロットを描いてくれる人はいない!」、そう強く思いました。
決意を固めた私は宝永さんを喫茶店に誘い出し、タロットカード制作の打診をしました。宝永さんは、なんと快諾! 宝永さんのお父様が占いの勉強に熱心な方だったということもあり、78枚全てのタロットカードを宝永さんに手がけてもらえることになりました。タロット制作においては、大アルカナの22枚だけというパターンも多いので、全ての絵柄を描いていただけると決まったときはとても嬉しかったですね。

1998年に宝永さんとふたりで琵琶湖近くのホテルに泊まり込んで制作を進めていきました。私が1枚ずつタロットカードの意味を伝え、イメージを下書きします。それを見た宝永さんがご自身の感性を活かして描きあげ、カードの絵柄を完成させたのです。
従来のタロットには、見ただけで負の感情を抱いてしまうような禍々しいモチーフが描かれたカードもあります。しかし、ステラタロットでは、そういったカードが負のエネルギーをまとわないようにすることを特に意識しました。それは、人々をいい方向へと導きたい、母の「悪いことや危険をそのまま伝えるのではなく、物事をいい方向に導くのが占い」という言葉を大事にしているからこそです。
2002年、いよいよステラタロットが完成。私が思ったように宝永さんはとても素敵なタロットカードを作ってくれました。
早くこのタロットカードを多くの人の元に届けたい! そう思うものの、実際に販売が開始されたのは2007年です。なぜこれだけの期間が空いてしまったのか。実はここにも超えなければいけないもうひとつのハードルが待ち構えていました。

なんと5年!
世界一のタロットメーカーの
審査を突破
販売にこぎつけるまで
タロットの絵柄を宝永たかこさんにぜひお願いしたいと思ったのと同様に、私にはタロットカードを販売するのであれば絶対にここだと決めていた会社がありました。それが、世界一のタロットメーカーであるスイスのAGM社です。AGM社から販売されれば、一級品として世界中にタロットカードを流通させることができますから。
もちろん権威あるAGM社なので「販売してください」とお願いしてもすぐに話が進むわけではありません。国際交渉に長けている友人に間に入ってもらい、協議に協議を重ね、やっと販売が決定しました。
AGM社ではタロットカードを1枚1枚チェックをして、「AGM社として適切なタロットなのか」を判定します。言い換えると、ステラタロットはAGM社の厳しい審査に合格したタロットということです。日本において、AGM社の基準を満たし世界に流通するタロットを作ったのは私だけでしょう。

私はタロットカードを作るのであれば自分の占いの哲学や霊的なものなどを詰め込んだ徹底的にオリジナルなものを作りたいと思っていました。長い月日がかかってしまいましたが、ステラタロットには私の要望の全てを詰め込むことができたと思っています。
そんなたくさんの願いが込められたステラタロットは国境を超えて新たな展開を生み出していくことになります。

ドラマ『魔王』をきっかけに
韓国でステラタロットが大ヒット
私は韓国でも芸能人や財界の方を占っていました。その時、たまたま私が手に持っていたステラタロットがある芸能関係者の目に止まりました。2007年に韓国で『魔王』というドラマが放送されたのですが、ドラマの中の重要なアイテムのひとつとしてステラタロットが登場したのです。
その結果、ステラタロットは韓国でフィーバーします。ドラマを見た方を中心に約2万個も売れました。ちなみに『魔王』というタイトルですが、最初は「悪魔」の予定でした。しかし、私の提案により変更されたのです。シナリオの中でもシーンごとに出すべきタロットをアドバイスしたりと楽しく関わることができました。
『魔王』は韓国で大ヒットし、翌2008年に日本で、国民的アイドルグループ「嵐」の大野智さんを主演に迎えたリメイク版も放送されました。こちらもタロットの監修は私が担当しています。日本でも大野さんのファンを中心に多くの方がステラタロットを購入してくれました。
このように幸先のいいスタートを切ったステラタロットですが、こういった展開になったのも偶然が重なっただけでなく、私が活動の拠点を韓国にも持っていたことが根本にあります。
元を辿ると韓国での活動のスタートは2000年にまで遡ります。まだいわゆるガラケーしかなかった時代に韓国でも日本でいうiモードのようなサービスがありました。その中で私のタロット占いのページを開設しました。
韓国では当時タロット占いをする人がほぼいませんでした。それまで、韓国で占いと言えば四柱推命が中心だったのです。それが、ドラマの重要なシーンにタロットが登場するほど身近になったのは、携帯電話で誰もが気軽に利用できる私のタロット占いサービスの影響も大きかったのではないかと思っています。
韓国発のステラタロットのフィーバーは、このような流れの中で生まれたのです。
携帯電話の占いサービスを開始してから約20年間、日本と韓国の二拠点生活を続けていましたが、新型コロナウイルスの流行に伴い、ついに撤退を決意しました。ですが、私にとって韓国は非常に思い入れのある国のひとつなのです。
>>「第3回」につづく
占い師に求められる才能と努力/タロット占いの第一人者・ステラ薫子
>>「第1回」占い師として生きていくと決めた瞬間/タロット占いの第一人者・ステラ薫子
2022-12-18