
占いをなりわいとしている人はどんな本を読んでいるのか。あの人の考え方や視点はどうやって生まれたのか。本との出会いやエピソードとともに偏愛している本を紹介してもらいましょう。
仕事運専門占い師/宮田シロク
自分の意志で
生き抜く人のバイブル
武論尊(原作)原哲夫(作画)『北斗の拳』
日本に生まれたからには誰でも知っている、国民的作品というものがある。
『ドラゴンボール』『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』などなど。
この『北斗の拳』(集英社)もそのひとつだろう。
「お前はもう死んでいる」
「退かぬ!!媚びぬ!!省みぬ!!」
「我が生涯に一片の悔いなし」
引用:武論尊・原作/原哲夫・作画『北斗の拳』(集英社)
遺伝子に刷り込まれたかのようになじみ深い名台詞。もはや好きとか嫌いとかの問題ではない。週刊少年ジャンプでの連載開始は1983年というのだから、このサイトをご覧の方は私を含め、ほとんどがリアルタイムでこの作品に接したことがないのではないだろうか。
しかし、学生時代にどこからともなくコミックスが回ってきた、近所のたこ焼き屋に置いてあった、アニメの再放送を見ていた、そんなかんじで誰しもが少なからず接したことのある名作であるのは確かだ。我が家の本棚にもなんとなくコミックが全巻揃っている。
そして今年、何度目かの一気読みをした。
「牡羊座のバイブルじゃん」
率直な感想がこれだった。
占い師になって6年、目に入るあらゆるものを星座や天体に結びつけてしまうのは職業病だと思うのだが、この『北斗の拳』という作品は間違いなく牡羊座である。
主人公のケンシロウは攫われた恋人、ユリアを取り戻すため旅をする。
そして出会う数々の宿敵。
登場人物すべてにそれぞれの正義と戦いがある。
数年前、主催する講座内でこのようなワークをした。
いつか自分がこの世を去るとき、お葬式で言われたい言葉を考えてみよう。そこに自分の価値観があるはずだから。
軸となる価値観には太陽星座があらわれやすい。
牡羊座の私が言われたい言葉はこれだった。
「戦い抜いた人だったね」
世紀末かよ。どの世界線を生きているんだ。
自分でもつっこみたくなるところだが、当時も今もほかに言われたい言葉は今のところない。
牡羊座にとって「生きること」や「戦うこと」は基本姿勢になっているようである。
ケンシロウの仲間、レイの唯一の弱点は妹のアイリだった。
アイリは両親と婚約者、さらには村人全員を惨殺され、奴隷となっていた。絶望のなかで抗う術を知らず、人形のように流されるまま生きる日々。
しかし戦うことを知り、武器を取り自ら敵に立ち向かう。
「兄さん思う存分戦って!」
引用:武論尊・原作/原哲夫・作画『北斗の拳』(集英社)
その姿を見たレイは言う。
「もうおれに弱点はない。アイリはおれから離れた。自分の意志で生き、自分の意志で死んでいくだろう!」
引用:武論尊・原作/原哲夫・作画『北斗の拳』(集英社)
自分の意志で生き、自分の意志で死んでいくだろう。
すごいセリフだと思った。
今、社会の中で自分の意志を持って生きている人が果たしてどのくらいいるのだろうか。
私は自分の意志で生きているのだろうか。
出勤するときには、自分を家に「置いてくる」という人もいる。
何かの意志はあってもアイリのように術を持たない人もいる。
少なくとも私はそうだった。
働いている苦痛な時間を夢だと思い込もうとしたし、何をどうすればいいのかわからず何年ももがき苦しんだ。
現在は、運良く仕事運専門の占い師として自分の意志で生きることができている。そして、ホロスコープを読むだけではなく起業コンサルタントのような仕事もしているのだ。
自らの力で稼ぎたい人のゼロからイチを作るお手伝いをしているわけだが、この仕事の背景には私自身がずっと感じていた「自分の人生は自分で舵を取りたい」という気持ちがある。
自分の意志で生きたい人のサポートがしたい。
かつての私のような人に、抗う術や武器を手に取る強さがあると知ってほしい。
そして自分の意志で死んでいくかはさておき、いつかこの世を去るときには「戦い抜いた人だったね」と言われたい。
世紀末かよ。
2022-11-27