占いギャザリング2022 レポート 三宅陽一郎/明翁ヘカテ

『占いNEW NORMAL』をテーマに、占いをなりわいとする方々と異業種の専門家が語り合ったオンラインイベント「占いギャザリング2022」。全10のトークセッションの内容を詳しく紹介していきます。

「占いギャザリング」レポート

占いギャザリングレポート
バーチャルAI占い師は
つくり出せるのか?
AIの進化から考える
「占い師に必要な要素」

三宅陽一郎

(ゲームAI研究者・開発者)

明翁ヘカテ

(占術家)

AI(=人口知能)に仕事を奪われるという言説を聞く機会は非常に増えてきました。そしてこの懸念は占い業界においても当てはまるかもしれません。AIテクノロジーは、占いの分野でもさらに活用されていくでしょう。

この対談では、占い師の明翁ヘカテさんがゲームAI研究者・開発者の三宅陽一郎さんに様々な質問を投げかけ、AI占い師が生まれる可能性について迫りました。

バーチャルAI占い師は、5年以内に生まれる

明翁ヘカテ(以下、ヘカテ)三宅さん、本日はよろしくお願いします。早速単刀直入にお聞きしますが、バーチャルAI占い師は今後つくりだされるのでしょうか?

三宅陽一郎(以下、三宅)つくり出されると思います。具体的には5年以内というところではないでしょうか。恐らくそれほど時間はかからないでしょう。

ヘカテそれは占いで生計を立てている側からするとかなりショッキングな情報ですね。AIに仕事を奪われるかもしれません…。

三宅ただし、その点はそう簡単にはいかないかもしれないですよ。バーチャルAI占い師が生まれても、人間の占い師とは競合しない可能性もあります。恐らくは、AI占い師は人間の占い師とは異なる形で存在するのではないでしょうか。

ヘカテなぜそう思うのでしょうか?

三宅これはAIの特長による点が大きいです。私は「西洋的なAI」と「東洋的なAI」というふたつの捉え方があると思っています。「西洋的なAI」は、何ができるのか、どんな能力を持つのかが重要視されます。AIに召使い的なものを求めていると言えるかもしれません。

一方の「東洋的なAI」の場合は、知能を持つものとしての存在やあたたかみを求めます。極論、役に立たなくてもいてくれればいいという考えです。

ヘカテ確かにドラえもんの例もあるように、私たちは機械に対しても友人や家族のような捉え方をすることは珍しいことではありません。「東洋的なAI」を無意識に求めているわけですね。

三宅そうですね。そして恐らくは占いにおいても「東洋的なAI」の要素は非常に重要なのではないかと思っています。しかし、この「東洋的なAI」をつくるのはただ優秀なAIをつくるよりも現状においては非常に困難な作業となっています。

AIと人間は、鏡のような存在

ヘカテAIの場合は、優秀な召使い的な存在よりも役に立たないけれどあたたかみを持った存在を生み出す方が難しいと。

三宅そうなります。私の仕事の一環でゲームのモンスターをつくることがあります。これを優秀な学生にお願いしたりするとプレーヤーが倒せないような完ぺきなモンスターをつくり出すということがよくあるのです。

ヘカテそれは、モンスターの中に自分を投影しているのかもしれないですね。

三宅でも、プレーヤーが欲しているのはゲームの難易度を上げるための非の打ちどころのない存在だけではありません。むしろ、ダメな存在のほうがいいということもあります

そのゲームの世界で本当に生きているような、ただ歩いたり眠ったり身体をねじったりするだけのモンスターに愛着を感じるといったケースも多いでしょう。しかし、こういった人間が自然にしている動作をさせるのは、優秀なモンスターをつくるよりもずっと難しいのです。

ヘカテその点では、人間とAIはまるで逆ですね。人間は、何も考えずに自然な動作を日々行っていますが、AIのように難解な計算をしたり複雑な知識を習得したりするのは簡単にはできませんから。

三宅人間と人工知能は鏡のようなところはありますね。結局のところ、AIは生きていません。食べなくても死なないし、何か目的があるわけでもないし、“生きる”や“死ぬ”などの観念もない。そういう存在に、漠然と「この世界できちんと活動をしろ」と言っても現実的には無理があるでしょう。だからこそ、人間らしいあたたかみを持った存在を生み出すのは簡単ではないのです。

ヘカテわれわれ占い師は、占いを通して人間の欲のようなものを取ってあげる作業をしているのではないかと思うのです。言い換えると、占いを使って相談に来た方の“執着を解いてあげる”といったことです。

三宅詳しくお聞きしたいです。

ヘカテ例えば「彼からメールが返ってきません」という相談があったとします。この相談に対して、ただ「メールは何日後に返ってきますよ」と答えるのは本質をついていません。

相談の裏には、愛情の飢餓や自己肯定感の低下、あるいは身体の栄養状態など様々な問題があるはずです。その相談の背景にあるものを考えながら、いい塩梅を選んで「えい!」と言葉を投げてあげるのが占いなのです。

三宅これこそが、AIが容易にできないことですね。AIそのものが「執着を持たない存在」ですから、相談者の“執着を解いてあげる”ということ自体わからないでしょう。そういう意味では、AIが人間の占い師に取って代わる可能性はまだまだ低いですね。

AI占い師が登場したら、どんな占いをする?

ヘカテAIが人間の占い師と同じように占いをするのは難しいとのことですが、逆に、AI占い師が得意とするのはどんなことでしょうか?

三宅AIは、百科事典100冊分くらいの知識を簡単に覚えることができます。そのため、占いにおいて必要な知識を全部詰め込むということも可能です

ヘカテそれはすごいですね。

三宅例えば、占ってほしい人が必要な情報をAIに伝えて、「よくわからないけれども、こんな結果が出ました」といった形の占いは間もなく登場するでしょう。しかし、そこから何かを伝えるのは現状においては困難です。「あとの解釈はあなたにお任せします」というような形が最も可能性が高いと思います。

ヘカテ占い師としてはとても興味深い話です。そうすると解釈の部分は人間が請け負う共存のような形もありえますね

三宅もう一点検討が必要なのは、AI占い師が生まれた場合に社会がどのように受け入れるのかという観点もあります。好意的な反応となるのか、否定的な反応となるのかはまだわかりません。

ヘカテ仮に5年以内という制限がなく、遠い将来まで含んだ場合に、AI占い師が人間の占いにまでアップデートされる可能性はあるのでしょうか。AIも人間のように悩み、人間のような占いができるようになる未来です。

三宅私は難しいと思っています。AIは人間と違って、この世界に根付いているわけではありません。ですから、“アイデンティティが揺らぐ”という人間的な悩み方も理解できないでしょう。ただ、あらゆる情報のつながりや流れを処理することについては圧倒的にうまいはずです。

人間だけが持つ「解釈をする力」

ヘカテお話をしていて、「占い師とは何なのか」ということも考えないといけないなと思いました。AIにできる占い、できない占いを聞いたからこそ人間の占いについて再度向き合いたいです。占い師とは一体なんなのでしょうか?

三宅個人的には、占い師は普通の人には見えない物事の流れが見える人だと思っています。そして、これはAIにはできない“解釈”という能力によるものです。

ヘカテ何かしらの現象に対して意味を見出すことはAIにはできない、と?

三宅そうです。例えば、古くから存在している御神木に雷が落ちたとします。この現象に対して、歴史的背景や文化的な文脈を用いて何かしらの意味を見出すのは人間にしかできないことです。

ヘカテそして、人間が持つ解釈の力をさらに特殊性を持って発揮できるのが占い師であるということですね

三宅私はそう思っています。先ほどの例で言うと、AIであれば木に雷が落ちた以上の意味は何も生み出せません。占いがAIには難しいということが段々とわかってきたのではないでしょうか。

ヘカテ個人的な感想となりますが、これまでAIに対して怖いという感情を持っていました。それが三宅さんとお話をしてAIにできること、できないことを理解する中で怖いという感情は薄れました。

三宅AIも、ひと昔前までは全く見向きもされない時代がありました。それが今はすごく注目されています。その結果、実際の存在以上に畏怖の念を抱かれているのかもしれません。もし、AIを擬人化するならば口下手なヤツですよ。

ヘカテAI占い師と仲良く共存できる未来をつくっていきたいですね。

ヘカテさんと三宅さんの対談から浮かんできた、AI占い師と人間の占い師が共存する未来。そんな未来が訪れれば、占いはより豊かなものとなっていく可能性もあります。AIと手を取り合って、よりよい未来を築いていきたいです。

2022-10-02

出演者紹介

三宅陽一郎(みやけよういちろう)

三宅陽一郎(みやけよういちろう)

ゲーム開発者。工学博士。デジタルゲームの人工知能を専門とする。著作『戦略ゲームAI解体新書』『人工知能のための哲学塾』ほか多数。slideshare資料公開。IGDA日本SIG-AI代表、DiGRAJ理事、人工知能学会理事、情報処理学会ゲーム情報学研究会運営委員。

HP:https://miyayou.com/

出演者紹介

明翁ヘカテ(めいおうへかて)

明翁ヘカテ(めいおうへかて)

占術家。西洋占星術を専門として、心理学や栄養学の観点を交えて鑑定や発信を行う。10代より占星術の研究を開始し、アメリカやイタリアでの留学を経ながら国内外の文献を読み漁りつつ、約10年で1万人以上を鑑定。

HP:https://linktr.ee/hecatemeio

レポート執筆者

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

ライター業とリサイクル業の二刀流で生計を立てています。机に向かって文章を書いたり、大きい荷物を運んだり、頭と体を日々フル活用しています。

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