

『占いNEW NORMAL』をテーマに、占いをなりわいとする方々と異業種の専門家が語り合ったオンラインイベント「占いギャザリング2022」。全10のトークセッションの内容を詳しく紹介していきます。
「占いギャザリング」レポート
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プロならば知っておきたい
占い師のための法律入門
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プロならば
知っておきたい
占い師のための
法律入門

高橋知典
(弁護士)

浅井耀介
(弁護士)

明蘭
(Z世代占い師)

普通に活動していただけなのに、占い師が知らないうちに訴えられてしまうケースは、他人事ではありません!
このセッションでは、SNSを中心に活躍するZ世代占い師・明蘭さんが、弁護士の髙橋知典さん、浅井耀介さんに占い師が知っておきたい法律の知識について質問しました。占い師がコンプライアンスの意識を持つことの大切さや、弁護士に頼るべきタイミングなど具体的な事例をもとに詳しく掘り下げていきます。
占い師が霊感商法で訴えられる!? 霊感商法の法的定義とは
占いが入り口となることも多い霊感商法。知らず知らずのうちに霊感商法に当たる行為をしていた…なんてケースを避けるためにも、法的な定義を知っておきましょう。
明蘭霊感商法とは何かを、具体的にお聞きしたいのですが?
浅井耀介(以下、浅井)そもそも霊感商法が、法律で定義されるようになったのは2018年からなのです。わりと最近ですね。
具体的に霊感商法とは何かというと、3つの条件がそろったときに霊感商法だとされてしまうのです。その3つとは、ひとつは「霊感など目に見えない能力を背景にしている」、ふたつめは「相手を不安にさせる」、最後は「お金をもらう」です。この3つの条件がすべてそろってしまうと、霊感商法に該当します。
明蘭占い師が霊感商法をしようと考えていなくても、霊感商法に当てはまってしまう場合もあるのですか?
浅井要は、合理的、科学的に実証することができない能力を背景にしてしまうと、霊感商法に当たる可能性が出てくるのです。霊視のようにわかりやすくオカルトな占い方だけでなく、タロットカードを使った占いや、星座占いなども、消費者(お客様)から見て合理的ではないと判断されてしまったら、霊感商法に該当する場合はあります。
髙橋知典(以下、高橋)裁判所から霊感商法だと判断されてしまったら、いくら占い師本人が霊感商法ではないと主張しても通らなかったりするので注意が必要です。
明蘭占い師側が、詐欺をしようとか、ぼったくろうという意識がなかったとしても、霊感商法だと言われてしまうケースもあるのですね。
髙橋基本的には、裁判所がどう判断するかなんです。合理的、科学的に実証できないと判断されたら霊感商法になってしまいます。占いという特別な技術で活動をしている以上、霊感商法だとして訴えられるリスクは常にあるということを忘れてはいけません。コンプライアンスの意識を持つべきでしょうね。
浅井お客様側が占い師を「霊感商法だ!」と訴えた事例は、各都道府県の国民生活センターのホームページで見ることができます。その中には、「悪霊がついている!」などという、いかにもなケースだけではなく、タロットや姓名判断のような占いが霊感商法として訴えられた事例もあるので、やはり注意するに越したことはありません。
髙橋霊感商法については、お客様の立場を重視した判断がなされるので、相手を不安にさせないということが大事になります。
占いが外れたという理由で訴えられることはある?
明蘭占いの当たり外れで訴えてきたお客様はいるのでしょうか?
浅井実際に裁判になった事例はあります。ただ、裁判所はこの件に関して、「占いは外れることもある」という大前提でお客様は鑑定を受けているので、占い師側を罰するには当たらないという判断をしています。
高橋自分の技術に自信を持ち、真面目に占いの仕事をしている人を、裁判所が罰することはないでしょう。ただし、自分の占いがインチキだとわかっていながら、真剣に占ってほしいというお客様にいい加減なことを言った場合、詐欺だと認定されることもあります。
明蘭「私の占いは100%当たります」とか、「このグッズを買うと幸せになれます」といった誇大広告はしないほうがいいということでしょうか?
浅井誇大広告は、景品表示法違反に該当することがあります。その誇大広告を見て、お客様が鑑定を受けたり、商品を買ってしまったりした場合、不法行為に基づく損害賠償請求をされる場合があります。要は、お客様が占い師にお金を請求してくることもあるということですね。お客様が裁判を起こした場合には、その請求が認められる可能性が高いです。
明蘭お客様を脅して占いをさせた場合はどうなのでしょうか?
浅井たとえば、「このままでは不幸になる」「あなたの家の間取りでは体調を崩してしまう」などと占い師が言った場合は、霊感商法の「不安にさせる」という条件を満たすことになります。
高橋相手の不安を煽って何かを買わせた場合は、脅迫ということにもなってきます。不安を煽る、そしてお金をとる。この流れが先ほど言った霊感商法の肝なので、占い師の方は訴えられたりしないように、こういうことはやらないよう極力気をつけるべきでしょう。
占い師がSNSで誹謗中傷されたら、訴えることはできる?
明蘭逆に、あの占い師は当たらないなどとお客様にSNSに書き込みなどをされたら、占い師がお客様を訴えることはできますか?
高橋実際に占いが外れたのであれば、占い師側はお客様の声として受け取らなくてはならないと思います。
ただ、占い師の人格を否定したり、占いを受けたこともないのに嘘の評価を書き込んだりされたなら、偽計業務妨害で占い師側が訴えることもできるでしょう。そのお客様があまりにもしつこく嫌がらせをしてくる場合は、弁護士に相談して法的措置を考えたほうがいいですね。
タロットカードをSNSなどで使用するときの注意点は?
明蘭他の人が作ったタロットカードを、You Tubeなどで使っている占い師さんをよく見かけますが、それは法的に大丈夫なのでしょうか?
浅井危ないですね。タロットカードの絵を描いた人、タロットカードの制作会社に著作権が発生しているので、タロットカードを無断でネットにアップロードしたら、著作権の侵害になる可能性があります。
明蘭SNSや動画などでタロットカードを使いたい場合はどうしたらいいのでしょうか?
浅井著作権者が許可すれば、使っても問題ありません。タロットカードを使いたいなら、タロットカードを作った会社のホームページなどを見て、使用する場合の規約を確認する必要があります。その上で、許諾をとる必要があるならとればいいでしょう。自由に使ってもらって構わないと許可している会社も中にはあります。
高橋タロットカードを作った人の立場になって考えてみましょう。自分の作ったタロットが無断で掲載されたらどう思うのかと。制作者側がちゃんと利益を得られているのかなと考えることが、SNSなどでタロットカードを使用する上で忘れてはいけないポイントです。悩んだら、とにかくタロットカードを制作したところの規約を読みましょう。
占い師が企業と契約するときの注意点は?
明蘭占いの館と占い師が契約したり、コンテンツプロバイダーと契約したり、事務所などと契約して芸能活動をするなど、企業と占い師が契約する場合、気をつけなくてはいけないことは何でしょうか?
浅井まずは契約書をよく読むことです。流し読みしてしまう方が多いと思うのですが。ただ、実際、契約書って難しくて読めないですよね。こういうときこそ、弁護士の出番なのです。弁護士というのは、契約書を読むためのトレーニングを積んでいます。弁護士にお金を払って、契約書を読んでもらい、おかしいところがないか見てもらうのもひとつの手ですね。
高橋契約書というのは、相手方とうまくいっているときにはあまり必要がないのです。いざ必要になるのは、契約した相手とうまくいかなくなったとき。そのときに後悔しないように、契約書は契約する前にしっかり読むことです。それが自分の身を守るために大事ですね。自分ではなかなか冷静に読めないものなので、第三者、特に弁護士に読んでもらうことをぜひ検討してみてください。
占い師は個人事業主。法律について知らないと思わぬ落とし穴にハマります。知らなかったでは済まされないことも多々あります。占い師がコンプライアンス意識を持つことが大事だと気付かされる対談でした。
2022-09-11