占いギャザリング2022 レポート バーチャル美少女ねむ/ニシー

『占いNEW NORMAL』をテーマに、占いをなりわいとする方々と異業種の専門家が語り合ったオンラインイベント「占いギャザリング2022」。全10のトークセッションの内容を詳しく紹介していきます。

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なりたい自分になれる世界で人は悩むのか?
近未来の悩みと占い

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バーチャル美少女
ねむ

(美少女バーチャルYouTuber)

ニシー

(#占う男)

AR(拡張現実)とVR(仮想現実)技術を活用したデジタル空間メタバースが注目を集めています。実はすでにメタバースでは生活が営まれており、交流も活発です。
理想の自分になれるメタバースの世界で人はどのようなことに悩みを抱くのでしょうか。バーチャル美少女ねむさんに、#占う男として活動するニシーさんが話を聞きました。

知っているようで知らない、メタバースとはそもそも何か

ニシー「メタバース」とは何か、まだ詳しく知らないという人も多いと思います。改めて、ねむさんからメタバースについて説明していただけますか。

バーチャル美少女ねむ(以下、ねむ)メタバースとは、主にインターネット上につくられた仮想空間のことを言います。この世界では、アバターを活用することで、名前、声、性別、外見などを自由に変えることができます。現実の自分とは全く違う存在になれることから「アイデンティティのコスプレ」ができる、とも言えますね。

ニシー気軽に違う自分になれるということでしょうか。「アイデンティティのコスプレ」とはおもしろいですね。現実世界でそれを実現するのは難しいですから。

ねむメタバースの世界と対比すると、現実は「強制された世界」と言えるかもしれません。現実世界では性別、年齢、外見といった情報からそれぞれに適した一定のふるまいが社会の中で求められます。これは呪いにもなり、そのことによって苦しんでいるという人も少なくないと思います。メタバースとは、そういった現実世界の苦しみから解放される場所とも言えそうです。

ニシー僕自身、メタバースの世界に非常に興味があって、実際に体験したいと思っています。今現在、どんな方々がメタバース上で活動しているのでしょうか?

ねむ芸能人の中には、仮想空間に興味を持つ方が非常に多いみたいです。芸能人ではない自分として生きてみたいという気持ちがあるからじゃないでしょうか。

芸能人とまでいかなくとも、現実世界で外見や年齢などの属性に大きな影響を受けていたり、自由を制限されていると感じていたりする人はメタバースで別の自分を求める傾向がありますね

ニシーメタバースをはじめる場合、費用としてはどのくらい必要でしょうか?

ねむ私の場合は40~50万円はかけていますが、今はもっと安くはじめることも可能だと思います。第一歩は、目や口など顔の動きをとらえるゴーグル、両手のコントローラーの3点セットを準備することですね。

ちなみに私は、その3点のほかに両足、お腹と計6点にトラッカーというセンサーをつけていて、身体の動きの全てをメタバース上に反映させています。仕事が終わるとメタバースの世界に入って一晩中『バーチャル美少女ねむ』として生活しているのです。

「理想の自分」は存在しない?

ニシーそもそもの話となりますが、なぜ、ねむさんはメタバース上で「バーチャル美少女ねむ」という人格になろうと思ったのでしょうか?

ねむこれは「なりたいと思ってなった」というよりも「気づいたらなっていた」というほうが正しいですね。最初は、アバターの姿でVTuberとして活動していました。配信をしながら、「バーチャル美少女ねむ」として他人とコミュニケーションをとっていく中で、今の人格がつくられてしっくりくるようになってきました

ニシーつまり、外部からの評価から徐々に作られていったということですね。

ねむそうですね。「バーチャル美少女ねむ」に関してもそうですが、私は「なりたい自分」「理想の自分」というのは、最初から自分の中にあるわけではないと思うのです。

ニシー占いをしていると、「自分って何?」「自分はどうなっていくべきか?」といったテーマを扱うことが多いです。「本来の私とは何か」とは、占いにおける大きな主題のひとつと言えます。ねむさんの著書の中では、この点についてイデア論を用いて説明していたのが印象的でした。

ねむそれは、メタバースで過ごすうちにたどりついたイメージみたいなものなのですが…。 今まで「自分自身」だと思っていたものは、「魂(イデア)」が物理現実というスクリーンに落としたひとつの影にすぎなかったのではないかという考え方ですね。

現実世界における自分とメタバース上の自分がいるとして、それはそれぞれの場所で求められている姿を映したものであって、その両方とも本当の自分ではないのかもしれません。

特にメタバースの場合は、アバターを使い分けることで複数の人格として生きることができますから、それらの人格それぞれを通して、自分の魂にいろいろな角度から光を当てて「こういう自分もあるのか」と試しているという感覚です。

ニシー僕は中学生の頃に、自分の中に「ニシータイプA」「ニシータイプB」というようにいろんな側面があるということに気づきました。それで、その側面を日によって使い分けるということを試してみたのです。しかし、当然ですが現実世界では外見は固定されています。結局は、誤解されたり理解されなかったりして、うまくできませんでした。

ねむ同じようなことを現実でやろうとするのは難しいかもしれませんね。
私自身、メタバースの中で「バーチャル美少女ねむ」以外のアバターも持っています。そのアバターが何かということは公表しませんが、複数のアバターを持つ人は多いと思います。自分の中の複数の人格を使い分けるということは、メタバース上では日常的に行われているのです。

メタバースでは、深刻な悩みが消えた!?

ニシーメタバースでは「なりたい自分」を試すことができる、うまくいかなかったら気軽に別の自分に切り替えられる、また他者とのコミュニケーションで自分も知らなかった自分の発見もできる、ということがよくわかりました。

現実よりも「自分の人格」に対する自由度が非常に高い世界ですが、メタバース上での悩みなどはあるのでしょうか?

ねむ選択肢が多いので、「どんなアバターになろうか」といった悩みは増えました。ただ、メタバースの中では深刻な悩みを抱えることはなくなったと感じています。自由度が高まった分、いつまでもひとつの悩みにこだわり続ける必要がなくなったのかもしれません。

ニシーなるほど。大前提として、メタバースの中での日々の生活が楽しいという点があるのでしょうね。

ねむ仮想空間で生活しているというと、時々、「現実の自分がむなしくなったりしないか」と聞かれることがあります。でも、そんなことは全くなくて、メタバースの中で自分の知らなかった側面を知ることできるのはめちゃくちゃ楽しいです。もっと多くの人が体験したほうがいいと思っています。

「ない」ものを「ある」と感じる、新たな感覚

ニシー現実とメタバースのリンクという観点では、ねむさんの本に書かれていたファントムセンスの話も印象的でした。

ねむメタバースの中で現実世界と同様に過ごすうちに、アバターに自分の身体性が移っていると感じる瞬間があります。例えば、そこがバーチャル空間であっても、山や森に行けば、自然の風が流れている感覚があったりする、といったことですね。

バーチャル世界で身体に触れられた感覚を現実のものとして脳が勘違いしてしまうという…。なんだかオカルトみたいな話ですけど。

ニシー仮想現実の中でより確かな現実感を持つために、将来的には、人間の脳を直接マシンにつなぐといった技術構想もあるそうですね。これまでも、人間は考えたことを現実にしてきましたから、いずれそのような技術も生まれてくるのでしょう。

ねむ今の技術進歩の速さでは、そういったことを実現するにはかなり時間がかかると思いますね。メタバースの根幹であるVR自体が何十年も前からある技術ですが、最近やっと普通の人でも気軽に参入できるようになったわけですから。

そういう意味では、誰でもメタバースの世界に入れるようになった今現在も、すでにすごいことが起こっているのだと思います。

ニシー確かに、昔に比べてかなりカジュアルになりましたね。そんな現状を踏まえて、ねむさんは、メタバースの未来をどう考えていますか?

ねむこの世界で生活できる人がもっと増えればいいですね。今はまだ人も少なくて、できることも限られています。具体的には、この世界にはまだ経済がほぼなく、お金を稼ぐということができません。もっと多くの人がメタバースに来て、経済が生まれ、生活ができるくらいまで進化してほしいですね。

日に日に注目度が高まっているメタバース。技術がより向上し、さらに多くの人に浸透すれば、現実世界の悩みから解放されるという日がくるかもしれません。

2022-08-04

出演者紹介

バーチャル美少女ねむ

バーチャル美少女ねむ

メタバース文化エバンジェリスト | 世界最古の個人系VTuber | VR&仮想通貨技術で【人類美少女計画】を企む美少女アイドル♪

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ニシー(#占う男)

ニシー(#占う男)

音楽好き占いマン・元ロックバンドSTANのg.vo
#占う男として活動中。

レポート執筆者

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

菅谷圭祐(すがやけいすけ)

ライター業とリサイクル業の二刀流で生計を立てています。机に向かって文章を書いたり、大きい荷物を運んだり、頭と体を日々フル活用しています。

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