
対面鑑定、電話やチャット占い、テレビの今日の運勢、スマホ越しに見る占いコンテンツ、占い記事や占術の本……。さまざまな形で届けられる占いの裏側では、多くの人が働いています。わたしたちの目に触れる占いはどのようなプロセスを経てつくられるのか、その過程での工夫や苦労はどういったものなのか。占いの裏方仕事をお伝えします。

「丸善 丸の内本店 占い本コーナー」の裏側
数ある書店の中でも、占い関連の本のラインナップが充実している書店・丸善。
本はウェブで買うという人が増えています。そんな中、プロの占い師から一般の占いファンまで、占いに興味を持つ人々のニーズをつかみ、魅力的な売り場を提供し続ける秘訣とは何でしょうか?

丸善 丸の内本店 実用書コーナー担当 ・望月あゆ美さん
占い師も驚くラインナップ
なぜ、占い本が
充実しているの?
占い師も驚くラインナップ
なぜ、占い本が充実しているの?

運勢本はもちろん専門書も豊富ですが、なぜここまで占い本が充実しているのでしょうか?
望月あゆ美さん(以下、望月さん)占い以外のコーナーでも同じことが言えるのですが、町の本屋さんでは買えない本をそろえるのが、大型書店の強みです。「あそこに行けば目当ての本がある」と、お客さまはわざわざ時間や労力を割いて来てくれます。だからこそ、返本しづらい本でも需要がある限り棚に並べるようにしているのです。
そうしていると、ほかにはない本を求めてお客さまも来てくれますし、さらに「こんな本が欲しい」と要望をくれたりもするので、それを考慮してまた本棚を作っていきます。
本棚には、お客さまの声が反映されているのですね。
望月さんときどき、知識の豊富なお客さまから「この本はこっちの棚に置いたほうがいいよ」などとアドバイスしてもらうこともあります。お客さまの声を聞くのも、とても勉強になりますね。
占い本をまとめ買い!?
書店を訪れる占い師
占い本を大量にまとめ買い!?
書店を訪れる占い師
実際、占い師さんはよく訪れますか?
望月さんお客さまの見た目からはよくわからないですが、自分から占い師だと明かしてくれる方もいらっしゃいますね。
タロットフェアのときなどは特に、「占い師さんかな」と思わせる風貌の方をお見かけします。タロットカードやタロット本をまとめて買っていかれたりしますよ。
まとめ買いする占い師さんは多いのでしょうか?
望月さん講演会で手売りするために、ご自身の本を大量に購入していく占い師さんもいますね。書店でまとまった売上が立つと、ほかの書店や版元さんもあの本は売れているのだと意識するようになります。その結果、多くの書店に本を並べてもらいやすくなるのです。
自分の本をPRする手法のひとつですね。
望月さん新刊本の著者の方が「この本の著者なんですけど…」と声をかけてくださることもあります。そんなときは、いい機会なので、POPを書いていただいたりしています。ご本人の直筆ですからファンの方も喜んでくださいますし、少しでも本の売上につなげたいという想いでお願いしています。
ただ、どの書店もバタバタしていることが多いので、突然だと対応が難しい場合もあるんです。できたら事前にご連絡をいただけると確実です。
「占い師になるには?」
という本が
売れている理由
「占い師になるには?」
という本が売れている理由
最近、気になる分野の本はありますか?
望月さん「占い師になるには?」といった本がとても売れています。職業としての占い師になるための本です。「副業占い師」というのもキーワードですね。

コロナ禍で自宅時間が増えた結果、占いを副業にしたいという人が増えているといわれていますね。
望月さんなるほど。今、占い師になりたい人が増えているのですね。どうしてだろうとずっと気になっていたのですが、しっくりきました。確かに、コロナ禍以降に、そういった本が数冊立て続けに出たのをよく覚えています。
丸の内店ならではの傾向はありますか?
望月さんここはビジネス街にある書店なので、スーツを着た年配の男性がよく訪れますね。そうした方から問い合わせをされるのは、風水の本が多いです。会社などで責任ある立場の方が風水を参考にしたりするのだと、この書店に来て初めて知りました。
占いのお客さんは8~9割が女性といわれます。男性客が多いのは、ビジネス街にある書店ならではの特徴かもしれませんね。
タロットブームの影響!?
初心者向け解説本が大人気
タロットブームの影響!?
初心者向け解説本が大人気

いろいろな占術の本がありますが、特に人気のある占術は?
望月さんやはりタロットですね。めちゃくちゃ売れています! 『My Calendar』(説話社)がタロット特集をしたときは特に売れました。
占い師のLUAさんの『78枚のカードで占う、いちばんていねいなタロット』(日本文芸社)のように、初心者向けにタロットの意味や占い方を解説する本も売れています。普段から平積みにしているので、手に取ってくださるお客さまは多いです。タロットフェアを開催すると、そのたびにグッと売上が上がりますね。
タロット以外でも、占いの教科書的な本は売れていますか?
望月さんブームに関係なく鏡リュウジさんや石井ゆかりさんの本は人気ですね。『鏡リュウジの占星術の教科書Ⅰ~Ⅲ』(原書房)は発売されてからずっと平積みで、今もかなりの数売れ続けています。在庫を切らさないよう発注をかけるタイミングに気をつかっているんですよ。

望月さん私自身、占星術の本を開いてみたこともありますが、とても難解で…。こんなに難しい本が売れているのをずっと不思議に思っていました。でもそれだけ、きちんと占いを学びたいという方が多いということですから、今後はそういった方に向けたフェアも企画していきたいですね。
書店は、
お客さまに「体験」を
提供する場所
書店は、お客さまに
「体験」を提供する場所
お客さまのニーズに応えるために、どんな工夫をしていますか?
望月さんよく売れる本の隣には、関連する本を置くようにしています。他店の売れ方やアマゾンのランキングを参考にしたり、版元さんに聞いたりして情報収集することも欠かせません。書店を訪れたお客さまが、お目当ての本だけでなく、より多くの有益な本に出会えるように試行錯誤しています。
また、ある意味で、本は実体のある「モノ」でもありますよね。だからこそ、書店で本に出会い、手に取って買うという行為自体を「体験」として楽しんでもらいたい、そういう想いを持って売り場づくりに取り組んでいます。
その業界のトレンドやさまざまなお客さまの声が反映されている書店の本棚。実際に足を運んで本棚を眺めてみれば、思わぬ発見があるかもしれません。書店員の方に売れ筋の本やオススメを聞いてみるのも楽しそうですね。
2022-07-31