
対面鑑定、電話やチャット占い、テレビの今日の運勢、スマホ越しに見る占いコンテンツ、占い記事や占術の本……。さまざまな形で届けられる占いの裏側では、多くの人が働いています。わたしたちの目に触れる占いはどのようなプロセスを経てつくられるのか、その過程での工夫や苦労はどういったものなのか。占いの裏方仕事をお伝えします。

「漫画『占いちゃんは決めきれない!』」の裏側
主婦と生活社『arweb』や、『LINEマンガ』などの電子コミックサービスで連載中の漫画『占いちゃんは決めきれない!』。
同漫画の主人公は、“占いちゃん”こと占井マコ。27歳の敏腕占い師である一方、自分のことは“決めきれない!”という悩みを持っており、自己肯定感の低さや女性特有の生きづらさに直面しながらも恋愛や仕事に励む様子が描かれています。
併せて星座×タロットで運勢をみる『ご自愛占い』を展開している、占いと漫画のマッシュアップコンテンツです。
今回は、同コンテンツのプロデューサー兼原作者である株式会社オズマピーアール・岩見めぐみさんにお話を伺いました。

株式会社オズマピーアール・岩見めぐみさん
現代女性の
「自己肯定感の低さ」
がテーマ
現代女性の「自己肯定感の低さ」がテーマ

『占いちゃんは決めきれない』第1話表紙 占いちゃんこと占井マコ
まず、漫画の主人公を占い師にしたのはなぜでしょうか?
岩見めぐみさん(以下、岩見さん)それについては、このプロジェクトのテーマからお話ししたいと思います。
私はPR会社に籍があるのですが、PR会社は社会課題や世の中の人の気持ちにどう寄り添うか、からアイデアを着想することが多いです。『占いちゃんは決めきれない!』は、もともと自分の課題でもあった、日本の女性の「自己肯定感の低さ」をテーマとしました。
日本の女性の「自己肯定感の低さ」に着目した理由は?
岩見さん私含め、20代後半から30代くらいの女性は、普段は気丈に振る舞っていても、実は自信がない人が多いんですよね。例えばSNSでは、その価値判断が「いいね」の数に委ねられるので、人からの評価で自分を判断してしまうといったことがよく起こっています。
そんなことを思っていたとき、たまたま占い師さんの話を聞きました。「お客様の悩みを解決することはできるけど、自分のことは全然決められないらしい」と。それをフックに物語を作れたら面白いんじゃないかと企画を進めたのが本作です。
その占い師さんが主人公のモデルになったんですね。
岩見さんはい。同年代の女性たちに聞いたエピソードも参考にしつつ、より優柔不断な部分を誇張・デフォルメしたのが主人公の占いちゃんです。
占いちゃんは27歳ですが、このくらいの年齢になると、仕事に慣れてきて、やりがいを感じられるようになったという方も少なくないと思うんです。その一方で、周囲に既婚者が増え、結婚を意識することも多くなり、以前のように勢いだけで恋愛できなくなってしまったり…。だからこそ慎重になりすぎて、なかなか決めきれない。
きっと同じような思いを抱えている女性はたくさんいるはず。彼女たちが共感できるようなキャラクターを目指して占いちゃんを作り上げてきました。

『占いちゃんは決めきれない』第1話冒頭
漫画家×小説家×占い師
チームで作り上げる
コンテンツ
漫画家×小説家×占い師
チームで作り上げるコンテンツ
制作はどのように進められているのでしょうか?
岩見さん私が原作を考えて、それを小説家の中村航先生が監修、作画担当の太陽シス子先生に描いていただきます。タロットや占いに関連する内容は、占い師のLUA先生に監修していただいています。
漫画内にはLUAさんオリジナルスプレッドの「ハートソナー」も出てきますね。
岩見さん「ハートソナー」は漫画的にも映えるビジュアル ですし、LUA先生ならではのご提案だと感じました。

LUAさんのオリジナルスプレッド「ハートソナー」
「エモい」にこだわった
クリエイティブ
「エモい」にこだわった
クリエイティブ
メインの読者層はどんな年代の方々ですか?
岩見さん「占いちゃん」を配信している『arweb』(主婦と生活社)の読者層の20〜30代の女性が多いですね。その年代に刺さるようなレトロなイラストデザインやストーリー展開を意識していますが、10代にも好評なようです。公式Instagramのフォロワーには中高生の方々もたくさんいらっしゃいます。
「占いちゃん」のような、80年代風のレトロなイラストは「エモい」として若者の間でも人気ですよね。
岩見さん80年代風の「エモい」雰囲気を出すために、イラストにはかなりこだわっています。ただ、「エモい」は「トレンディ」と紙一重でもあるので、トレンディに寄りすぎてしまうと、「占いちゃん」の現代的なストーリー展開にそぐわなくなってしまうんです。そうならないように、作画担当の太陽シス子先生と相談しながらビジュアルを完成させていきました。
占いちゃんが言う
「決めきる」とは
占いちゃんが言う
「決めきる」とは
漫画では「自己肯定感の低さ」「優柔不断」以外にも、「決めきる」がキーワードになっています。どんなねらいで「決めきる」というキーワードを選んだのですか?
岩見さん作中に「人生は決めきることの連続」という言葉が出てくるのですが、誰しも優柔不断になることはあるけど、目の前の何かを決めきらないと、いつまでも人に流されたり、宙に浮いているような状態になったりしてしまうと思うんです。
悩むことは悪くないけど、ときに「自分の中で決めきる」ことが大切な場面もあると伝えたくて、この言葉を選びました。
仕事でも恋愛でも「決めきる」ことが求められる場面はありますよね。
岩見さん何かに悩んでいるときは「決めきる」きっかけが欲しいという人も多いのではないでしょうか。作中では「決めきる」と「占い」をセットにして、何かを判断するきっかけに占いを使うという方法を提案しています。
占いが「決めきる」ために背中を押してくれることもあると思うし、もちろん占い結果が思ったものと違っても、自分の意思で「決めきって」いいんです。

占いが「決めきる」ヒントになることも
占いは手段で
ヒントでしかない
占いは手段で
ヒントでしかない
占い業界全体でも、お客様が「ひたすら占い結果を信じる」ことよりも、「占い結果をヒントにして、自分でどうするのか決める」ことを重視する流れになってきていると思います。
岩見さん占い監修のLUA先生も「『占いでこういう結果が出たから、こうすることに決めました』という人は、いつまでも自分の意思がないままで、なんでも占いのせいにして生きてしまう」「占いは手段で、ヒントでしかない」とおっしゃっていたので、作中にも意識して取り入れています。
何事においても、最終的にどうするのか決めるのは自分ですもんね。
岩見さんひと昔前の占い師さんは「あなたのここがダメだ」とズバッと指摘するスタイルで、白黒はっきりつけることこそ正しいという風潮が強かったかもしれません。
でも、いまの時代は優柔不断なことがダメというわけではなくて、「優柔不断な自分に不満を感じていたり、生きにくさを感じていたりするならば、変えていけばいい」という考え方にシフトしているんじゃないでしょうか。
まずは「自分が優柔不断であることに気づけたことがえらいし、変えようと思えたことがすごいよね!」って、自分を褒めてあげてもいいんじゃないかと思います。
今後は“漫画のキャラクター”としてではなく、“占い師”としての「占いちゃん」をよりピックアップして、そのファンを増やしたいという岩見さん。漫画の展開はもちろん、占い師としての「占いちゃん」の活動にも注目しておきたいですね。
2022-06-16
ステキ!
素敵ですよね!