鑑定が盛り上がらない。 お客様に響くセッションとは?

――占いをなりわいにしている人が抱える悩みや不安。1人で考えても解決しないことも多いでしょう。これまで多くの占い師の相談にのってきた、占いカフェ&バー「燦伍(さんご)」のオーナー占い師である千田歌秋さんが、あなたのお悩みにお答えします!

第10回

鑑定が盛り上がらない。
お客様に響く
セッションとは?

「鑑定が盛り上がりません。出たカードの意味を説明したり、アドバイスをしたりしてもお客様に響いていないようです。どうすればお客様のお悩みを解決できるようなセッションになるのでしょうか?」

これは、かけだしの占い師に非常に多い悩みの一つですね。デビューしたての頃は、とにかく成功体験を積み重ねたい時期なのですが、現実はそんなに甘くはないのだと思います。

鑑定が盛り上がらず、お客様の期待に応えられないことで、自信を持てない人も多いでしょう。もちろんベテランになっても、この悩みから解放されるとは限りません。

お客様の心に響く鑑定にならない原因としては、さまざまなことが考えられます。ここでは、鑑定が盛り上がらない代表的な二つのケースを挙げて、原因を探っていきましょう。

鑑定が盛り上がらない
原因は?

鑑定が盛り上がらない原因は?

一つ目は、鑑定の内容に驚きや感動がない、つまりは単なる人生相談のようになっているケースです。

「お金を払ってプロの占いを受けているのに、知人に相談しているのとあまり変わらないな」とお客様が感じたら、すっかりテンションが下がってしまうのは当然です。

ただ単に出たカードの意味を説明するだけでは、それがいわゆる「占いの語彙」にならない可能性が高くなります。

日常生活で使うようなわかりやすい言葉で結果を伝えるのは、とても重要なことです。しかし、占いで出た答えなのか、占い師の個人的な意見なのか、お客様が判別できないようだと、占いを受けている感覚がなくなってしまうでしょう。わかりやすい言葉を使いつつも、占いのメッセージだとわかる表現を心がける必要があるのです。

「鑑定の肝」を明らかに
することも必須

「鑑定の肝」を明らかにすることも必須

もう一つは、占いに集中しすぎてお客様の心を置いていってしまっているケースです。

占いの結果をきちんと伝えることに集中するあまりに、視野が狭くなって、相談者の気持ちからかけ離れたメッセージになってしまうこともあり得ます。そうなれば当然、ポイントがズレてしまうので、お客様の心をつかむ鑑定にはならないでしょう。

お客様は、必ずしも自分が知りたい本質の部分を自覚しているわけではありません。ただ、そこを認識してもらわない限り、響く鑑定にはならないのです。ゆえに一生懸命占いをする前に鑑定の肝となる部分を明らかにし、お客様にもそれを自覚してもらうべく上手に誘導していく必要があります。

鑑定において重要なのは、

  • お客様に今の状況(=本当に知りたいことに迫る要素)を思い起こしてもらえるか
  • お客様が知りたいことの核心を共有できるか
  • その状況と核心にフィットしそうな言葉を選ぶことができるか

なのです。

「お客様の心に響く鑑定」
の具体例

「お客様の心に響く鑑定」の具体例

たとえば、お客様から「今の部署に不満があるので異動願いを出してもいいか」という相談があったとします。

占ってみると、雷によって倒壊する「塔」のカードが出ました。これはトラブルの暗示ですから、「警告のカードが出ました。トラブルが起こるかもしれません。今異動するのは止めた方が良さそうですね」というアドバイスをすることになるでしょう。

しかしそれだけでは、「そうですか、止めた方がいいのですね」で終わってしまいます。場合によっては、「自分でカードを引いてもそれくらいのことはわかりそうだな」と思われるかもしれません。

先述したポイントを参考にしてみると、いくつかの課題が見えてきます。

  • お客様に現状を認識してもらっていない
  • お客様が知りたいことの核心をつかめていない、共有できていない
  • 占いのメッセージらしい豊かな表現が乏しい
  • 核心に合った言葉を選択できていない

改善のためには、いきなり「異動願いを出したらどうなるか」を占うのではなく、まずは現状を占うことが必要です。そこからお客様が今置かれている状況、つまり理解者やライバルの存在、自己評価と組織からの評価、異動希望先の状態、条件や待遇、公私のバランスなども、認識してもらいましょう。

すると「実は『能力には自信があるのに正当に評価されていない』という不満がある」ことがわかってきたりします。こうした部分まで把握できれば、どんな言葉をチョイスすると心に響くかが、自然と浮かび上がってくるでしょう。そうなったら、あとはメインの相談に対する占い結果と照らし合わせながら、表現豊かに伝えればいいのです。

これらに沿って、さきほどの「警告のカードが出ました。トラブルが起こるかもしれません。今異動するのは止めた方が良さそうですね」というアドバイスを改善してみましょう。

「警告のカードが出ました。これまでコツコツと積み重ねてきたあなたの実績を、数え上げてみてください。そう、ありますよね。それが脅かされるかもしれません」
(お客様に現状を認識させ、知りたいことの核心をつかんで共有する)

「その実績は雲を突く高い塔のように、立派な威容を誇っているはずです。しかし、異動したいと言った瞬間に、それに乗じてあなたが築き上げたものを潰そうとしてくる人物が現れると、このカードは教えてくれています」
(占いのメッセージらしい豊かな表現を取り入れる)

「心当たりがありますか。もしそうなら、みすみすその人に付け入る隙を与えるべきではないでしょう。今異動するのは止めた方が良さそうですね」
(知りたいことの核心に合った言葉を選択する)


これで、お客様の心にぐっと響きやすくなったのではないでしょうか。ほかにもさまざまな表現が考えられると思いますので、自分ならではの語彙を取り入れてみましょう。

「占いの的を決めて射る」
「占いの表現と語彙を操る」ことが重要

「占いの的を決めて射る」
「占いの表現と語彙を操る」ことが重要

このように、その人の心境や状況にマッチした豊かな表現は、それだけお客様の心理とシンクロしやすいので、「確かにこれは思い当たる」とか「それはもしかしたらあの人のことかも」などと、何かを感じてもらいやすくなるのです。

占いを、馬に乗って弓矢を操る流鏑馬(やぶさめ)に例えてみましょう。

お客様が注目している的を正確に射ると、大いに盛り上がりますし、馬を操りながら美しく的を射る姿は人に感動を与えます。

一方、いくら正確に射抜いたとしても、的そのものが見えない場合や、馬と弓矢を華麗に操る様子が見えない場合、お客様は喜びません。

少なくとも、お客様が注目すべき占いの的を決めて、しっかりとそれを射るか、もしくは、馬と弓矢を美しく扱うように、占いの表現と語彙を端然と操るか、どちらかができていれば、必ずやお客様の心をつかむことができるでしょう。もちろん、両方できるのが理想ですね。

鑑定がお客様の心に響くかどうかには、あなたと相談者で物事の核心を共有したうえで、あなたならではの表現ができているかどうかが深く影響しています。それができるようになれば、お客様の悩み解決の一助となるでしょう。

2022-04-10

著者プロフィール

千田歌秋(せんだ・かあき)

千田歌秋(せんだ・かあき)

占いカフェ&バー燦伍(さんご)のオーナー占い師であり、バーテンダー。飲食と占いの融合とホリスティックな癒しをテーマに、占い鑑定と開運メニューを提供。店舗経営と占い鑑定のほか、占い師の育成やマネジメント、占いイベントの企画監修も行うなど、様々な占い事業を展開している。
著書に「ビブリオマンシー 読むタロット占い」(日本文芸社)、「はじめてでも、いちばん深く占える タロットREADING BOOK」(学研プラス)がある。

HP https://khakisenda.wixsite.com/eranos

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