
対面鑑定、電話やチャット占い、テレビの今日の運勢、スマホ越しに見る占いコンテンツ、占い記事や占術の本……。さまざまな形で届けられる占いの裏側では、多くの人が働いています。わたしたちの目に触れる占いはどのようなプロセスを経てつくられるのか、その過程での工夫や苦労はどういったものなのか。占いの裏方仕事をお伝えします。

「日本西洋占星術カンファレンス」の裏側
9月23日の秋分の日に開かれる、第3回日本西洋占星術カンファレンス。西洋占星術業界で活躍する専門家たちが集結しテーマに沿った研究を発表、それを講義形式で聞くことができる学術会議のようなイベントです。

2019年に立ち上げたプロデューサーであるANTHEM(アンセム)の晶(あきら)さんに、その経緯やイベントへの思いについてうかがいました。
日本西洋占星術カンファレンスを 立ち上げたきっかけは?

どういうきっかけで日本西洋占星術カンファレンスを立ち上げたのでしょうか?
晶海外で定期的に西洋占星術のカンファレンスが開かれていることを知ってから、ずっとカンファレンスに興味を持っていました。そして、そこに実際に参加された占星術家の方からのお話を聞いて「是非、日本で開催したい」と思うようになりました。
2018年12月の冬至の日、占星術家の芳垣宗久先生主催の交流会に出席していたとき「日本でも西洋占星術のカンファレンスを開催したい」と話しましたら、その場にいた方たちが、背中を強く押してくださったんです。その日をきっかけに本格的に動き始めました。
人生まっとうするくらいの 気持ちで望んだ
そこから、先生方にお声がけしていったのですか?
晶カンファレンスを開催したいという思いが生まれた瞬間から「この先生には絶対ご講義いただきたい」というイメージがありましたので、お話できる先生からご相談しました。芳垣宗久先生には交流会の場でお願いをして、定期的に講座を主催させていただいていた松村潔先生にはその日中に報告とご依頼のご連絡をしました。
鏡リュウジさんも1回目から出演されていますよね。
晶当時鏡先生とはまったく親交がない状況だったんですが、鏡先生がいない第一回目は考えられませんでした。どうしてもご講義いただきたくて、急だったのですがその時期に先生が講座をやられていた栃木まで企画書を持って押しかけて直接、お願いをさせていただきました。その際にこれは日本で初めての西洋占星術カンファレンスになると意義づけていただきました。

すごい行動力ですね。
晶しかるべき窓口からご連絡して、という方法もあったのですが、そのときはもういてもたってもいられなくて…(笑)。それで、先生に直接会いに行き直に願いをお伝えしました。
熱意が伝わってきます。
晶日本西洋占星術カンファレンスを立ち上げるという構想の段階で、この場をこれから日本に生まれ繋がる学びの場としてゆく為には、最初にどのような種を植えられるのかという事の重要性について深く考えていたんです。初回こそ、その種そのもの。なので、その1回は、絶対に大事にしたいと。
大げさかもしれないのですが、この1回目のときは「もうここで自分の全てが終わっても後悔ない」という覚悟を持って挑みました。出演いただいた先生方、サポートくださった皆さまのおかげです。
占う側向けのイベントを主催 これまでの占いとの関わり方
晶さんはこれまで占いとどのように関わってこられたんですか?
晶2011年からオラクルカードのセッションを始めて、2015年から松村潔先生のところで西洋占星術を学び始めました。
新たに学びたいと意欲が深く広がり研究したいという気持ちが膨らめば、自分が興味のある分野の先生をお呼びしレクチャーしてもらう会を定期的に開いたり、2016年には占い師さんやその界隈の方を集めた「indigo soul café」という約50人規模のイベントを開催したりました。
その当時は、占われる側主体のイベントはあっても、占う側へ向けたイベントはなかなか数が少なくて…。「ないなら作るしかないという」気持ちだけで動いていました。
占う側の人たちに 元気でいて欲しいという使命感
今回の「日本西洋占星術カンファレンス」においてもそうですが、ないなら自分で作ろうという発想がパワフルですよね。
晶自分も含めてなのですが、占いに関わる方々は、この現代では少し生きづらさを抱く感受性の強い方が多いと肌感で感じていました。そういう人たちのために何かできないか、と常々思っていたんです。
もともと占い師というお仕事は、命を肯定してゆくことでもあり、人を励ましたり、悩みを相談されたりする立場ですよね。だからこそ、その励ます側の人たちにも、元気を充電できる、そんな場を生み出したいという願いが強くありました。そういう使命感が働いているのかもしれません。
誰でも入ってこれる 閉塞感のない場所にしたかった

「日本西洋占星術カンファレンス」に出演される先生方は、どのような考えでお声がけしているのですか?
晶「誰でも実力主義で入ってこれる閉塞感のない場所」を創りたい思いがありました。あとは思想や占星術の分野においても偏りがないように、多様性を意識しました。
テーマも人選にも多様性を感じましたね。
晶ありがとうございます。その多様性がある中にも「占星術が好きで楽しんでいらっしゃる方」ということも軸としておいています。初学者であっても、研究を深めていらっしゃる参加者の方たちにも、どなたにも楽しく学んでいただきたいという思いが強かったので。
「占星術って面白い!」「まだまだ発見の喜びがある!」という楽しい気持ちで繋がれる場を提供したいと思いました。松村先生にも第一回目の講義中に「これは面白い試みだから続けたらいいですね」とおっしゃっていただきました。
1回目のコンセプトのひとつに「音楽フェス」というのがあったんですが、音楽フェスっていろんなジャンルのアーティストの方が出てくる中、それぞれがリスペクトし合っているじゃないですか。そういう雰囲気を作りたいと思ったんです。占星術が好きという気持ちで、全ての参加者がつながれたらいいな、と。
トップレベルの人に触れて欲しい 日本西洋占星術カンファレンスへの思い

占星術に携わってよかったと思える体験ですね。
晶はい。業界のトップの方たちに触れることで、占いをお仕事とされているどんな方にも「誇りを持って仕事をできる」という確認の場をお届けしたいと考えました。
占星術の勉強に終わりはなく、受け継がれる情報を読み解く為には、歴史を学び、現在を見極め、未来を見渡してゆくという実力が必要です。それにはそれ相当の知識や経験、努力を必要とします。
でも、一途に、ひたむきに、真面目に、その占いの研究や実践という活動を続けていらっしゃる先生方が多くいらっしゃっても「占い師に洗脳された」のような突発的なニュースが流れたり、「占いと依存」みたいなネガティブな問題が取り沙汰されたり…。
「怪しさと紙一重」な部分がどうしても否めない分野ではありますよね。
晶はい。そのうえでトップレベルの先生方は、怪しさや批判との間、ギリギリのところに立ちながらも、勉強を続け、社会の中で占星術の価値を模索し続けているように私からは見えるのです。
そんな先生方の「どういう思いで占星術に生業として携わってきているのか」という生き様に触れていただくことで、占星術に携わる方のエールになったり、モチベーションになるのではないかと考えたんです。
長く学び続けていらっしゃる方でも、初学者の方であっても、トップレベルの先生方の情熱や叡智に触れていただきたい、ただその思いです。占いは、「伝える」という行為をすごく大切にしている分野だと思います。ですので、オンラインの配信であっても登壇者の発している魅力が伝わる臨場感を大事にしたいと思っています。
第3回目のテーマは「EROS(エロス)」 多くの人たちをカバーできる内容に

3回目となる今回は「EROS(エロス)」というテーマですが、なぜこのテーマを選んだのですか?
晶コロナウイルスの影響で死を身近に感じるようになった反面、生きる喜びついて考えさせられる状況が増えたと思うんです。占いに携わる方は社会の悩みや問題について触れる機会が多いと思うので「難を乗り越えていくためには、その力をどこで見出していくのか」は大事なポイントになると考えました。また先生方に講義をいただくにあたって、様々な発表ができるような大きなテーマがいいというところで「生命力」というキーワードが出てきました。「生命力」ということで「パッション」という案もあったのですが、「エロス」のほうがより生きる事への生々しさ、創造的且つ根源的でもあように思えたので、今この時代にトップレベルの先生方が語る「エロス」にみなさんも興味を持つのではないかと。そして、それこそがご参加いただける方の生きる力になるのではないかと思いました。それともうひとつ。実際の占いの中で恋愛はよく話題に上がるので、それともリンクして良いテーマになると思いました。鑑定メインでやってらっしゃる占い師さんにとっても、「人が人に惹かれる気持ち」について考えを深めることによって、悩んでいるお客様に対して多角的な視点を提供できるのではないかと思いました。
「エロス」という単語はたしかに恋愛から哲学的なところまで幅広く語られますよね。
晶そうですね。恋愛問題をまったく聞かない占い師さんもいれば、哲学的なことばかりお客様と話す占い師さんもいると思います。そういった多くのジャンルのご参加者の皆様に、多彩な先生方が読み解く「エロス」は、刺激的でもあり、きっと今の仕事に、ご自身の生活に、実践的な学びをお届けできると思いました。
できるだけ多くの方に楽しんでいただきたいという晶さん。将来的にはこの日本西洋占術カンファレンスをホテルなどで3日連続で開催し、登壇者を増やし、基礎から応用研究にわたって学べ且つ、楽しく交流もできる場にしたいのだそう。占星術に携わる方たちを元気にしたい、占星術業界に新しい風を吹かせたいという本気の思いが言葉の節々から伝わってくるインタビューでした。
2021-09-17